鈴木カツさんのこと
1990年の夏に築地の店「Any Old Time」のドアを開けたのが、カツさんとの出逢いだった。
某情報誌に載っていた記事には
「アメリカンルーツミュージックを語らせたらこの人の右に出るものはいない!!」
みたいなフレーズで紹介されていた。フォークソング、カントリー、ロックンロール。
ロカビリーのバンドを始めて3年目だった僕はその記事の切り抜きをだいじに持っていて、
しばらくしてからようやくカツさんに逢いに行けた。
昼から薄暗い店内、びっしりのLPレコード、そしてカツさんの飄々とした風貌に一発でヤラれた。
それ以来ときどき仕事をさぼってはコーヒーを、夜はスペシャルソフトサラミとビールをいただきに通った。
コレ知ってるかい?イカすぜ!コレ聴くといいよ!そうだこんどよぉ○○来るんだけど、どう?
田中くんは元気かい?いいねーいいねーバンバンいっちゃおう!OK牧場!!
って感じで、いつも軽いノリで励ましてくれた。
2003年にアルバムを出すことになったとき、プロデュースを快諾してくださった。
アルバムは紙ジャケで、神様のビルヘイリーに敬意を表してパロディで行こう!いいねー!!しびれちゃう!曲順はよ、俺はとやかく言わねぇけど、1曲目、これだけは俺に決めさせてくれ。この曲でいこう、「Welcome to the World」っくぅぅ!!いいねこのタイトルもまたいいよ。オープニングはこれだ。あとは任す。じゃ!
いっつもこんな調子だった。
ちなみにイジリ―岡田氏となぎらさんの激しい生トークを目の当たりにしたのもこの店だった。
その後、店を畳んで海のほうですてきな暮らしをされているカツさんだった。
久しぶりにお会いできたのは昨年の12月だった。
僕がソロ名義「歌っテル」として音楽活動に勢いをつけた年の暮れに、中川五郎さんと逢わせてくださった。
それはそれは強烈な縁をいただいた。
カツさんは以前のシュッとした江戸っ子らしい喋りは相変わらずだったのでとても嬉しかった!
そのカツさんはいま、大きな病と向き合っている。
闘うのではなく、全てを受け入れ、どうか、あの調子で飄々と、日々を過ごしていけますように、と
遠く西の空の下で祈るばかりだ。
ほんとカツさんのおかげで、僕らはここまで来てます。ありがとうございます!
そう思ってる人、たくさんいますよ、間違いなく。
だから、がんばれがんばれ、って言いませんよ、もちろん。
カツさんらしく、イイ感じで、生き抜いてくださいね。
新刊本も買いますよ。
サインもらいに、そっちまで行きますからね。
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